大阪府内でがん診療を行っている66施設で構成する、大阪府がん診療連携協議会の薬物療法連携部会は、「がん薬物療法に関するトレーシングレポート(TR)」の共有を推進するため、16日から大阪府薬務課のホームページ上でTR活用のレクチャー動画を提供する。
大阪府内のTRの状況は、特定の薬局に偏っている状況で、がん薬物関連処方せんを応需しているとみられる府内4600薬局の対応は一般化していない。一方で、大阪府下の外来がん患者の9割が協議会66施設を利用しており、TRのニーズは潜在している。
66病院のうち17病院では独自のTRで研修会なども開催されている例もあるが、TRそのものは共通化されていなかった。このため薬物療法連携部会は8月、府内全域で活用できる共有TRを策定した。12月には大阪府薬剤師会にも協力を求めた。
部会長の髙木麻里・大阪国際がんセンター薬局長は、「がん薬物療法は経口抗がん薬も増え、外来に移行している。病院だけで患者の服薬マネジメントは限界があり、保険薬局との連携は不可欠」として連携ツールの必然を強調。在宅での副作用モニタリング、サポートを実施し、TR報告を求めた。副作用に関してTR上はCTCAE(有害事象共通用語規準v5.0)での評価を求めている。
●タスクシフト加算が契機に
がん診療を行う病院では今年度診療報酬改定で、外来腫瘍化学療法診療料に「がん薬物療法体制充実加算」が新設されたことから、薬剤師が介入する診察前面談が実施される。髙木氏らはこれによりTRの活用が増え、それによって保険薬局薬剤師のモチベーション向上が期待されるという。
診療報酬の加算規定もあって、いわゆる薬薬連携の必然は高まっており、高木氏によると、がん診療規模の小さい地域では保険薬局側からTR策定を行うことが活発化しているが、大都市規模ではTR共通化は進んでいない。大阪では病院側からTR共通化が提案されたことになり、病院サイドは一気にTRによる患者マネジメントが加速することに期待を示している。
なお、8月に作成したTRは修正途中にあり、16日からは完成版でレクチャ―する。